見つめていられるだけで良かったもの。
それは……



僕の欠片<1>




「シバくんっ」
聞きなれた元気の良い声がする。
僕が声の方へと振り返るとそこに有るのはいつもと何一つ変わる事の無い兎丸の笑顔。
僕は一週間前に兎丸の気持ちを聞いた。
その時は嬉しさと恥ずかしさとそして後ろめたさで俯いたまま何も喋れなかった。
兎丸の気持ちを受け止めてやる事のできない弱い自分に。
こんな僕にも兎丸は本当に優しかった。
兎丸の気持ちを裏切る事になろうとも、僕は嘘をつくことだけはできなかった。
というよりも兎丸の精一杯の語りかけにすら自分の気持ちを自分の声で伝える事の出来ない臆病者だったというだけだ。
兎丸を傷つけることを恐れ、ただ黙って下を向いている方がどんなに兎丸を傷つけるのかも気付かずにいた。
こんな僕に兎丸はニッコリと笑った。
「僕、シバ君の気持ちに整理がつくまで待ってるから」
僕の気持ちは兎丸に見透かされていた。
少し戸惑う僕にもう一度だけ「待ってるから」と念を押すと兎丸は教室を飛び出した。
二人っきりでいた放課後の教室に僕は一人取り残された。
教室を出て行った兎丸はきっと泣いたのだろう。
一体どれほどの涙が兎丸の頬をつたったのだろうか。
稚拙な推測しか出来ないのだけれど、僕は苦しかった。







アトガキ
えっと、すみません、この話続きます。
しかもめちゃくちゃ短いし(汗)
琉玖のクセに生意気にも分割してUPしていきます。
どうか見捨てないで最後までお付き合いしてやって下さいませ。